特別養護老人ホームに、80代前半で入居した男性と70代後半で入居した女性がいた。どちらも配偶者を失い、数年の独居生活を経ての入所。2人とも、普段は施設内で車椅子を使用していたが、互いに好意を持った途端、それまで投げやりだったリハビリに積極的に取り組むようになった。
目的はひとつ。「車椅子から降りて、杖や手すりを使わず、2人で手をつないで施設の廊下を死ぬまでに歩きたい」というものだった。ささやかな願いが、2人の残りの人生における最大の夢となった。
1年後、ゆったりした歩調ながら、2人は一緒に廊下を歩けるようになった。その後は、互いのベッドを行き交い、抱き合い、さらに、体の動く可能な範囲での性交渉を持つようにもなる。2人にとって特養での毎日は、人生最後の恋の日々となったのだ。
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